発症すると99%が死亡すると言われている猫伝染性腹膜炎(FIP)は、はっきりと原因も治療法も確立したものは無く、わからないことだらけです。
可愛く愛しい猫が、発症してから数日で亡くなることもあり、飼い主は立ち直れないほどのショックを受けてしまいます。
大半の猫の腸に存在していると言われる「猫コロナウイルス」が、何をきっかけで「FIP」になるのか・・・そして、宣告された飼い主に出来ることはどんなことがあるのか。
FIPは、死亡率100%ではありません。数は少ないですが、完治した例もあります。亡くなってしまう猫と完治した猫とではどこに違いがあったのか、飼い主としては知りたいところです。
今回は、猫伝染性腹膜炎(FIP)の初期症状や原因、そして完治した猫の情報を見ながら詳しく解説いたします。
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猫伝染性腹膜炎(FIP)とはどんな病気なの?初期症状は?
コロナウイルスは大変多くの種類があり、人間に脅威をもたらした「SARS」、「MARS」もその一部です。
FIPのおおもととなるコロナウイルスは「猫コロナウイルス」と言って、人畜共通ではありません。猫コロナウイルスは弱毒性で、感染すると下痢を起こす猫もいますが、ほとんどの猫は無症状です。
子猫の場合は、微熱や嘔吐、下痢の症状がでることがあります。虚弱な体質の猫ほど、その症状は重くなります。
そして、猫コロナウイルスの感染は大変簡単に起きてしまい、日本の猫の90%が感染していると言われています。外にいる猫と比べると、特に同室内に多くの猫が存在する保護センターや多頭飼いの場合は確率が高くなると言われています。
これは、トイレを介しての感染が1番多いことと、食器の共有などが原因です。大変容易に感染してしまうのです。
FIPの原因はわからない!
問題なのは、この90%の中の何%かが「猫コロナウイルス」→「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPウイルス)」にウイルスが変異してしまう事なのです。
どうして変異するのかと言う理由や原因は、はっきりと判明していません。ウイルスの特性とその猫が持つ特性が関係しているのではないかと言われています。
また、変異を起こすのは、「4か月~3歳」「14歳以上」「過度なストレス状態」「免疫低下状態」の猫に多いと言われています。
FIPウイルスに変異してしまうと感染力は弱まり、食器やトイレの共有で感染することはないと言う声もありますが、どれもハッキリと言いきれるものではありません。
同室で飼っている猫が上記の4つの条件に当てはまらず、免疫力もしっかりした健康な猫の場合は、感染しない例は大変多くあります。
FIPには「ウェットタイプ」と言われる症状と「ドライタイプ」と言われる症状があり、初期はウェットタイプの症状があり、次第にドライタイプの症状に移行することが多く見られます。
発症も個体差があり、変異から最短で2日ほどで発症することもありますが、2週間ほど潜伏する場合もあります。
FIPの初期症状を知る!
ウェットタイプ
ウェットタイプと言われるのは、血管炎が起こり血管の透過性が亢進して、血液のタンパク質を含んだ水分が血管外に漏れ出すだめです。
初期症状は、高熱、黄疸(地肌や白目)、尿が濃い黄色(山吹色)になります。ほぼ同時に漏れ出した水分によって、腹水が溜まり、お腹が異様に膨れ上がります。
水分に腸が圧迫されて便秘になったり、腹膜炎の症状として下痢を起こすこともありますが、ずべての猫が一緒の症状ではありません。
水分は徐々に体の隙間に流れだして溜まり、胸や心臓を圧迫していきます。子猫の場合は、呼吸困難を起こして数日で死亡することが多くなります。
ドライタイプ
食欲不振や体重減少が起こります。化膿する肉芽腫性の腫瘍が腎臓、肝臓、腸に出来ます。運動神経系や目に炎症を起こし、歩行困難や失明に近い状態になります。
ウェットタイプから進行して発症するケースが多く、数日から数か月で死亡することが多くなります。病気の進行スピードも個体差が激しく、一気に悪化してしまう事もあれば、ゆっくりと進行する場合もあるのです。
どちらにも言えることは、感染症を併発していたり、持病がある猫は早く進行すると言う事です。
発症を促すストレスとはどんなこと?
ストレスは人間も、動物も植物も命ある物すべてが抱えているものです。そしてその感じ方は、それぞれ大きく違い、同じ出来事や物事でも、ストレスととらえる人とそうでない人がいますね。
猫も同じです。猫同士でもストレスを感じやすい子もいれば、そうでないタイプの子もいます。また、猫と人間とでは本能に違いがあるため、人間の尺度で「ストレス」を当てはめてしまうと、大きな勘違いをしてしまうこともあります。
FIPを発症してしまうと、飼い主は自分がストレスを与えたのではないかと悩みます。または、愛する飼い猫のストレスを感じ取ってあげられなかったのではないかと悔やんでしまうこともあります。
では、発症した猫たちは何がストレスだと感じたのでしょう。実際にこの病気で子猫を看取った経験のある飼い主の多くからは、ペットショップや保護センターからもらい受けて、数日後には発症したと言うケースがたくさん聞こえてきます。
子猫は、さまざまな理由で親と引き離されて間も無い状態です。知らない猫たちに囲まれて、不安な日々を送っていたのかもしれません。
「知らない猫でもそばにいてくれれば幸せ」、と感じる猫もいれば、常に緊張感にさいなまれていた子もいるのでしょう。この時受けたストレスが大きく作用していることは十分に考えられます。
ペットショップでのショーケース生活が苦痛で無いとは言いきれませんし、他の猫の鳴き声や動物の声が怖かった子もいるでしょう。
「実はあの時とても怖かったんだよ」と打ち明けてくれたらどれだけ助かるかと思いますが、これは憶測の域を出ることはありませんね。
多頭飼いの猫に発症が多く見られていることはわかっています。そこから考えても、猫は猫同士の関係が大きなストレス原因となると考えられます。
また、多くは体力的に弱かったり、感染症を起こしているなどすでに免疫力が低下している事と、ストレスが重なると発症が多くなります。
当然体調が優れないということだけでもストレス原因となりますので、ワクチンで予防できる感染症は予防しておくのが大切なことです。
完治した猫たちがいることを忘れないで!
99%の死亡率と言われるFIPですが、完治した猫たちもいるのです。虹の橋を渡る猫たちとの違いはどこにあるのでしょうか。
- 発症時に免疫力が著しく低下していないこと(虚弱体質で無い)
- 食欲が低下しないこと
- 通院が大きなストレスにならないこと(通院でグッタリしない)
- 感染症を起こさないこと
また、獣医の中には、FIPだとわかったとたんに治療を放棄する医師もいると言います。無駄な努力で猫を苦しめるだけと考えているようですが、症状によってはまだあきらめることはありません。
FIPはわからないことばかりで確実な治療法も無い中、治療が成功するのは1%の奇跡ではあります。でもその奇跡はどの猫に舞い降りるのかはわからないのです。飼い猫の症状を冷静に見つめ、飼い主が納得のいく治療をしてもらいましょう。
インターフェロン、ステロイド、抗生物質、輸液、利尿剤と、さまざまな症状に合わせて対症療法で治療していきます。個体差があるため治療にかかる日数はまちまちですが、完治できそうな場合は2か月~長くても4か月以内には、経過が良くなっているはずです。
まとめ
猫伝染性腹膜炎(FIP)はとても「死」に近い病気です。「感染」と「変異」と言う2段階を経て発症しますが、猫コロナウイルスに「感染」しただけではFIPではありませんので、過剰な心配はありません。
「4か月~3歳」「14歳以上」「過度なストレス状態」「免疫低下状態」の条件下での「変異」が多く確認されています。
FIPウイルスに「変異」してからは個体差はあるものの、ほとんどの猫は数日~数か月で死んでしまいます。
変異原因不明、ワクチンなし、特化した治療法なしのFIPを発症した時は、手探りで治療を進めることしか出来ません。
食欲もあり、元気もあるなら、絶望することはありません。1%の望みを捨てずに頑張りましょう。飼い猫の状態を冷静に見つめ、家族と医師を交えて治療方針を決めて進みましょう。
また、アナタの愛猫が大きな怪我や病気をした場合の時の準備はできているでしょうか?どんなに健康な愛猫も、歳をとり病気や怪我をしてしまう事は覚悟しないといけません。
猫には人間と同じように皆保険があるわけではないので、病気によっては高額な治療費になる事も多くあります。その時に治療費が高額で、適切な治療を受けれない、選択することができないという事がないようにしたいものです。
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